中学校教員からジュニアクラブチーム指導者の道へ。一般社団法人EAST.Oスポーツコミュニティーを立ち上げ、子どもたちがバスケットボールを通じて成長することだけにとどまらずスポーツの魅力を伝え、子どもたちのこれからのスポーツライフに貢献したいと願う田川 敬さんにお話をお伺いしました。
―これまでのバスケットボール歴を教えてください
田川:指導者になりたいと志したのは中学2年生の時です。当時ミニバス上がりだった僕は、中学1年生の時から試合に出させてもらっていましたが、年度が変わって2年生になったころ、指導者であった外部コーチの方が辞めることになり、自分たちで練習を考えることになりました。
先輩たちは上手でしたがいい加減で・・・コーチがいなくなった途端、練習はお遊びでした。それが僕はものすごく嫌で。新チームになってキャプテンである僕が練習を考えるようになったのですが、後輩たちにこう言われました。
「3年生みたいな楽しい練習がしたい!」
これはバスケットの駆け引きを楽しむという意味ではなく、お遊びがしたい!に当時聞こえてしまったんですね。
※写真はEAST.O.ACADEMYの選手たち
田川:そこで自分の気持ちは切れてしまい、学校生活でそのエネルギーは違った方向に(笑)
しかし、3年生になった時には技術指導ができる先生が赴任し、助けられました。その先生の指導を受けられたのは引退までの5か月間だけでしたが、充実した毎日を過ごせていたのを鮮明に覚えていますし、進路指導も親身になって聞いてくださいました。スポーツをやりたいけどできない、満足できない選手を僕みたいな人間が一人でも救ってあげることができるのなら、将来はバスケットボールの指導者になりたいと思い、高校も体育大学に進学しやすい体育科のある学校に決めました。
日本体育大学では指導者としての勉強を中心に、近くの薬科大学でコーチをして学んでいました。当時の日本体育大学は120人ほど部員がいる中で大変でしたが、その分いろんな考え方や、各出身校での練習メニューを共有し合い、勉強できる環境と仲間たちと助け合いながら充実した大学生活を過ごせました。
―今の仕事をはじめたきっかけを教えてください
教員として関わっていた時、昨今話題になっている部活動の制限があり、思うように自チームの練習もできなくなってきていました。生徒たちに、近くのスクールやクラブチームを探して来たら?と問いかけると、当時は近くにベストな環境のチームがなかったようです。バスケットをより深く学びたい生徒がいるのに、このバスケが盛んな東大阪の町で環境がないのはもったいない。必ず必要とされる時代がくると思い、2019年にクラブを立ち上げ、2020年に非営利組織として法人格を取得しました。
今ではたくさんのバスケットボールクラブがありますが、中学校の思いも理解できる、珍しいタイプのクラブだと思います。
―仕事のやり甲斐や、大変だったことなどを教えてください
田川:卒団した選手たちがコーチとして戻ってきたり、高校や大学の様子などを報告に来てくれた時です。逆に、高校に進学した選手からネガティブな話を聞くと悲しい気持ちになりますが・・・相談しに来る選手がたくさんいるのは嬉しいことです。また、高校に進学し、スポーツを続けてくれることが、何より嬉しいです。先日は高校を卒業し、プロに挑戦したい意欲を持った選手まで報告に来てくれました。
スポーツはバスケットだけではないですよね。他にも魅力あるスポーツは沢山ありますし、僕も昔はたくさん習い事をしていました。教員時代の卒業生で、高校はバスケ、大学はスポーツ推薦でアメリカンフットボールをして大活躍、もう一人はラクロスの西日本選抜のキャプテンがいましたね。先日まではアルティメットの元日本代表選手が女子の指導スタッフとして在籍していました。僕の仕事では、バスケットはもちろんのことスポーツの魅力を伝え、子どもたちのこれからのスポーツライフに貢献したいと思っています。
好きな事をさせてもらっているので大変だったことはありませんが、近年は有り難いことにスクール生も多く指導させていただき、人数が多く新規入会や体験に制限をかけ、ストップしてしまうことがありました。僕が指導者になると決めた原点から考えると、なんとかしたい気持ちでいっぱいになります。出来るだけ初心者経験者問わず、地域に愛されるクラブとして受け入れの幅を増やせたらと思っています。
田川:また、バスケに熱中しすぎてプライベートを疎かにしてしまってはいけませんね。バスケットを通じた人間形成が大切ですが、人の子を幸せにする前に、まずは家族に感謝し、自分の家族を幸せにし、真の人を幸せにできる指導者を目指したいです。
―スクールの紹介、特徴などを教えてください
田川:スクールでは、ドリブル、シュートに特化した個人スキル向上を目的としています。ミニバス、部活、他クラブチームに所属していても問題なく、自分磨きの場として活用いただいております。毎年スクール生、クラブチーム生の男女合わせて100~130人ほど会員がおり、初心者の生徒も多数在籍しています。スクールやクラブで学んだ練習に対する姿勢や考え方を各チームに持ち帰り、私生活面に置き換えて伝えていくことで、普段の生活や地域全体のバスケットのレベルが上がり、自分のスキルアップにも繋げられるよう指導しています。また、教員がボランティアスタッフとして多く在籍していますので、子供一人一人に目を向けた人格形成や、「心」のレベルアップにも期待でき、安心・安全を保障できるのが強みでもあります。
―今後のビジョンを教えてください
田川:信頼できるスタッフを増員し、スクールの数も増やしていきたいです。指導者になりたいと大学に進学したOBが多数いるので、同じ考えを共有できた教え子がコーチとして増えていくのは理想です。そしてEAST.O.ACADEMYの指導を受けることができる環境をもっと増やし、イーストのカラーをしっかりと出しつつ、社会貢献に繋げたいです。また、U-12/U-10カテゴリや、幼児教育にも興味があり、スポーツの本質から携わっていくことができれば指導の幅を広げることができますし、ゴールデンエイジ世代の育成にも、積極的にトライしていきたいです。