現ロサンゼルス・レイカーズの八村塁選手と中学生時代に共にプレーし、現在は富山県でSD Basketball School/SD U-15の活動をおこなっている岡山翔太郎さんに、今の仕事をはじめたきっかけや「勝ち負け以上に選手の基礎力や考える力の向上に重きを置いた指導」といったお話をお聞きしました。
―これまでのバスケットボール歴を教えてください
岡山:小学1年生からバスケットボールを始め、大学4年生まで選手として活動していました。中学時代には、現ロサンゼルス・レイカーズの八村塁選手や現越谷アルファーズの笹倉怜寿選手と共にプレーし、全中(全国中学校バスケットボール大会)で準優勝という成績を収めました。
高校では、奥田中学校の坂本コーチの息子さんが監督を務めていることもあり、地元の高岡第一高校に進学しました。当時、チームは全国的にはそれほど強いわけではなく、自分と周りとの熱量の差や、坂本先生とのバスケットボールに対する考え方の違いから対立することもあり、多くの迷惑をかけました。しかし、坂本先生の熱意や温かい声かけに支えられ、自分自身も成長することができました。3年生最後のウィンターカップで坂本先生を全国の舞台に連れて行けたことは、非常に良い思い出です。
その後、名古屋学院大学に進学しましたが、途中で北陸大学に編入しました。プロを目指していましたが、怪我が相次ぎ、その後、就職の道を選びました。
現在は、「SD Basketball School」や「SD U-15」で指導者として活動しており、これまで累計500人ほどの指導に携わってきました。
※SD Basketball Schoolでの指導の様子
―今の仕事をはじめたきっかけを教えてください
岡山:まず、大学卒業後は就職を考えていました。しかし、卒業式の前日に内定先へ辞退の連絡をしました。その理由は、大学4年生の3月初旬、塁と連絡を取った際に「アメリカのバスケを学びたいんだよね」と話したところ、塁から「こっち来いよ」と誘われたからです。その言葉に「こんな機会はない」と即答し、すぐに内定を辞退しました。
しかし、3月下旬にコロナが大流行し、塁にキャンセルの連絡をせざるを得なくなりました。幸いにも教員免許を持っていたため、講師登録をしたところ、翌日に連絡をいただき、中学校で1年間働くことになりました。ここから、私のコーチとしてのキャリアがスタートします。
当時、指導する選手たちはほとんどが初心者で、自分の熱量や指導とのギャップに日々悩まされました。また、教員の働き方改革による部活動の制限もありました。その中で、「本気でバスケをやりたい子どもたちに教えたい」と考え、独自にスクールを立ち上げることを決意しました。
最初の生徒は3人だけで、しばらくは厳しい時期が続きました。しかし、試行錯誤を繰り返す中で少しずつ生徒数が増加し、令和6年度にはU-15のチームを立ち上げるまでに至りました。
―仕事のやり甲斐や、大変だったことなどを教えてください
岡山:指導のやりがいは、選手たちの成長を間近で感じられることです。小学生や中学生の成長スピードは驚くほど早く、前回の練習で苦戦していたメニューを次の練習ではしっかりできるようになっている姿を見ると、指導していて本当にやりがいを感じます。
選手たちが努力を積み重ね、できることが増えていく瞬間に立ち会えるのは、コーチとしての大きな喜びです。
一方で、スクールを始めた頃は本当に苦労しました。最初の募集で集まったのはわずか3人。この3人の選手たちを大切に育てようと心に決め、地道に活動を続けました。
その後、SNSやポスティングなどの集客方法が徐々に功を奏し、ようやくスクールらしい形を作ることができました。苦しい時期ではありましたが、振り返ると多くのことを学べた貴重な経験だったと感じています。
―スクールの紹介、特徴などを教えてください
岡山:SD Basketball Schoolでは、個人技を重視した練習が特徴です。フィニッシュやドリブルワークなどの技術練習を行い、それを対人練習で実践することを基本としています。スクールにはさまざまなレベルの選手が在籍していますが、指導方針としては下のレベルに合わせるのではなく、上のレベルについてこられるように選手たちを引き上げることを目指しています。
そのため、難易度の高いメニューもありますが、選手たちは積極的にチャレンジし、練習を通じてどんどん上達しています。
SD U-15では、育成に重点を置いた指導を行っています。確かに勝敗は重要ではありますが、それ以上に、最低限のスキルやバスケットボールIQを身につけ、次のステージに進学してほしいという思いがあります。そのため、勝ち負け以上に選手の基礎力や考える力の向上に重きを置いた指導を心がけています。
―今後のビジョンを教えてください
岡山:今後のビジョンとして、SD Basketball SchoolおよびU-15の活動を通じて、バスケットボールの楽しさを伝えるとともに、自ら考える力を持った人間を育成していきたいと考えています。
競争する楽しさ、負ける悔しさ、勝つ喜びなど、さまざまな感情を経験し、それを糧に成長してほしいと思っています。
これからの時代は、自ら考え行動しなければ取り残されると感じています。そのため、選手たちには、自分で考える力を養う指導を行い、バスケットボールを通じて「生きる力」を身につけてもらいたいと願っています。スポーツを通じて得られる経験が、彼らの将来に大きく役立つものとなるよう取り組んでいきます。
―最後に、八村塁選手とのエピソードを教えてください
岡山:塁とのエピソードといえば、中学1年生と3年生の時に同じクラスだったことが思い出深いです。部活だけでなく、クラスでも一緒に過ごす時間が多く、自然と行動を共にすることが多かったですね。 オフの日には、よく学校近くの体育館で自主練をしていました。僕が塁の家まで迎えに行き、塁が準備をするのを待って、一緒に歩いて体育館へ向かうのがいつもの流れでした。その途中でコンビニに寄って、フライドチキンや軽食を買うのが恒例になっていて、今でもいい思い出です。
塁は本当に練習熱心な人でした。特に印象的だったのは朝練です。前日のうちに先生に気づかれないよう体育館の鍵を開けておき、僕たちが朝練に行く頃には、すでに汗だくになりながらシュートを打っていました。バスケットボールに対する彼の情熱や努力は、当時から際立っていましたね。