「Jr.ウインターカップ愛媛県予選3連覇」「U-12全国・全関西大会出場」などの実績を誇るB.FORCE愛媛の代表・小倉 貴誉さんに、クラブ設立のきっかけや、指導への想い、今後のビジョンなどをお聞きしました。
―これまでのバスケットボール歴・指導歴を教えてください
小倉:愛媛県出身で、小野小・中学校を卒業後、松山工業高校へ進学。選手としてのキャリアは高校まででした。その後、U-12カテゴリーの「小野MBC」で14年間指導し、四国・全国・全関西大会などで複数の実績を残してきました。
JBA事業では、愛媛県U-12エンデバー(現DC)活動のスタッフや、県育成センターのメインスタッフも務めさせていただきました。
2020年にU-15クラブ「B.FORCE愛媛」を設立。Jr.ウインターカップ愛媛県予選では2022〜2024年に3連覇を達成。2024年にはU-12対象のスクール「standard academy」も立ち上げ、現在は松山市を拠点に活動しています。

※B.FORCE EHIMEでの活動の様子
―今の仕事をはじめたきっかけを教えてください
小倉:きっかけは、自身が高校3年の夏に腰椎を痛めて運動ができなくなったことです。その際、父が指導していたU-12の「小野MBC」の練習に同行し、サポートしたことが、指導者としての第一歩になりました。
その後、ミニバスの卒業生が地元中学に進学してから満足な活動ができていないと聞き、部活動の枠を超えて何か支援ができないかと模索しはじめました。地元の方々の協力の声に背中を押され、地域に根ざしたクラブづくりをスタート。
しかし、社会体育の枠組みでは制限が多く、十分な環境を整えるのは容易ではありませんでした。そんな時に、U-15のすべてのチームが出場可能な「Jr.ウインターカップ」が創設され、本気で全国を目指す舞台が整ったことが大きな転機となりました。
「中途半端な活動はしたくない」「高い志を持つ選手と真剣に向き合いたい」——そんな想いから、B.FORCE愛媛の設立を決意しました。

―やり甲斐や、大変だったことなどを教えてください
小倉:プロのコーチの方々のように本業ではないですが、やり甲斐を感じるのは選手の“人間力”の成長に触れたときです。思春期の中で、我慢や努力をしながら仲間・保護者・指導者との関わりを通じて変わっていく選手たちの表情や姿勢。それを間近で見られるのは、何より嬉しい瞬間です。
練習では常に「自分のために、そして誰かのために」動く大切さを伝えています。チームスポーツにおいては、そのバランスこそが大事だと考えているからです。
一方で苦労もありました。ひとつは、U-12からU-15へカテゴリーが変わった際に、練習強度を上げすぎて怪我人が多く出てしまったことです。専門トレーナーの助言を得て、フィジカル強化とケアを取り入れるなど、環境を大きく見直しました。今では怪我も軽症で済むことが増えています。
もうひとつは、選手一人ひとりの個性と向き合う距離感。思春期の選手たちは、それぞれ育ちや経験も違います。だからこそ、毎回の練習で必ず全選手とコミュニケーションをとるよう意識しています。

―チームの紹介、特徴などを教えてください
小倉:チーム名「B.FORCE」は、“basket”“baller”“Black”などの頭文字「B」と、「力・勢い」を意味する「FORCE」を組み合わせたもので、「愛媛のバスケの力」を全国に広めたいという想いが込められています。
「日本一」を掲げて日々練習していますが、勝利よりも、選手個々が目指す進路に向けて自ら考え、努力する姿勢を重視。こちらから答えを与えるのではなく、自分の進む道を自らの判断で選べる選手を育てたいと考えています。
「自分の居場所は自分でつくれ」「敷かれたレールの上を進むな」——日々の活動を通じて、選手の自立心や主体性を育て、高校でも活躍できる準備の時間として取り組んでいます。
私自身、中学生の頃に先を見据えて考えられていたわけではありません。ただ、近くにその重要性を伝えてくれる大人がいれば人生は変わっていたかもしれない。だからこそ、選手の未来に少しでも良い影響を与えたいと願って伝え続けています。

―今後のビジョンを教えてください
小倉:設立6年目を迎え、現在は指導の分業化を進めています。ナチュラル接骨院の直人トレーナー(木下直人さん)、BOS WORK OUTのKAZUコーチ(野村一優さん)など、それぞれの分野の専門家と連携し、質の高いトレーニング環境を整えています。
B.FORCEは、企業の皆さまのご支援にも支えられながら、今では多くの方に応援していただけるクラブに成長しました。保護者の皆様のご協力もとても大きいです。その感謝の気持ちを胸に、さらなる発展を目指しています。
また、U-15カテゴリーは日頃から熱心に指導してくださってるU-12の指導者さんのお陰で成り立っています。支えていただいている皆さんの期待も裏切らないよう頑張っていきます。
「愛媛から全国へ、世界へ」。昨年度のウインターカップで活躍した新谷勇晴(日本体育大学•前 鳥取城北高校)、金子來樹(藤枝明誠高校)、深水虎太郎(千葉ジェッツU-18)らのように、全国トップレベルで戦える選手、そして“日の丸”を背負う選手を育てることを夢見て、今後も全力で指導にあたっていきます。

