アメリカでプロデビュー、Bリーグの信州ブレイブウォリアーズなどを経て、現在は東京都でバスケットボールスクール「栗ニック」の活動をおこなっている栗原祐太さんに、今の仕事をはじめたきっかけやアメリカでの挑戦についてのお話などをお聞きしました。
―これまでのバスケットボール歴を教えてください
栗原:友人に誘われ、小学校5年生の途中からバスケットボールを始めました。
小・中・高校と、バスケットボールが特に有名でも強いチームでもない環境で過ごしましたが、小学生の時に見たNBAの試合映像に衝撃を受け、それ以来「アメリカでプロになる」という目標を持つようになりました。大学は、有名選手でもなく強豪校の出身でもなかったため、単身アメリカへ行く前にスポーツ栄養やトレーニングについても学びたいと考え、早稲田大学へ進学。
大学時代は一度も試合に出ることなく終わりましたが、卒業後カリフォルニアへ渡り、インターネットで見つけたトライアウトを片っ端から受ける日々を送りました。1年間の間、トライアウトには合格するものの、その後のトレーニングキャンプの途中でカットされることが続きました。
自分がなぜカットされるのか、何が持ち味で何が足りないのかを考えながら練習を重ね、拠点をニューヨークへ移して挑んだトライアウトとトレーニングキャンプで見事合格。独立(マイナー)リーグではありますが、プロデビューを果たすことができました。その後、海外・国内のプロリーグで12シーズン選手として活動。
アメリカでは、田臥勇太選手とも練習させていただきました。NBAのフェニックス・サンズでプレイした後のダラス・マーベリックスでサマーリーグに参加されていたタイミングです。他にも、様々なコーチ達に教えていただいたことも本当に素晴らしい経験となりました。
アメリカ独立リーグ優勝経験あり
bjリーグ:高松ファイブアローズ(キャプテン)、東京サンレーヴス(副キャプテン)、埼玉ブロンコス(副キャプテン)
Bリーグ:信州ブレイブウォリアーズ
選手時代からバスケットボールスクールを立ち上げ、東日本大震災の際には、協力者の力を借りながら6年連続でチャリティーバスケットボールクリニックを実現しました。
現在、自身が運営・コーチを務めるバスケットボールスクール「栗ニック」を都内4カ所(三鷹、武蔵野、自由が丘、東村山)で開催。また、複数の私立高校の指導にも携わっています。さらに、自身がデザインするバスケットボールブランド「KYUS」も展開中です。

※栗ニックでの指導の様子
―今の仕事をはじめたきっかけを教えてください
栗原:アメリカでバスケットボールに挑戦していた際、さまざまな体育館でコーチたちがプライベートレッスンを行っているのを見かけました。選手としてバスケットボールで生計を立てることはもちろん、コーチとしてもこうした形で仕事ができるのかと驚きました。
当時、日本ではバスケットボールを教えることはボランティアが当たり前で、お金を払う文化がありませんでした。しかし、バスケットボールを日本でより身近で人気のあるスポーツにするためには、「バスケットボールにお金を払う」という価値観を定着させる必要があると考え、日本に戻ったらスクールを立ち上げたいと思うようになりました。
また、私はバスケットボールの名門校でプレーした経験がなく、体系的にスキルを習ったこともありませんでした。そのため、「バスケットボールを学びたい」「上手くなりたい」と思う人が成長できる環境を作りたいと考え、スクールを立ち上げました。

―仕事のやり甲斐や、大変だったことなどを教えてください
栗原:どんな目的の子も笑顔で練習に取り組む姿を見ると、本当に嬉しくなりますし、やりがいを感じます。バスケットボールだけでなく、最初はできなかったことが、継続することでできるようになり、さらに上を目指す瞬間に立ち会えることは最高です。
また、「以前より活躍できるようになりました!」という報告や、バスケットボールに関する悩み・相談を受ける際、選手自身は気づいていなくても成長を感じられることがあり、それがとても嬉しいです。
最初にスクールを始めた頃は、日本ではまだバスケットボールスクールが少なく、「なぜ習うのにお金を払うのか」と言われることもありました。また、スクールの参加者が0人や1人のことも頻繁にありましたし、指導の報酬が図書カードだったこともありました。大変な時期でしたが、今では良い思い出です。
コロナ禍では、対人の仕事をするすべての人が大変な思いをしましたが、スクール生に会えないことが本当に辛く、彼らの大会が次々と中止になることにもどかしさを感じました。そこで、少しでもできることをと考え、朝の時間にオンラインレッスンを実施。皆の顔を見ることで、自分自身も奮い立たせることができました。スクール生や関わってくれている人たちの存在が、自分の原動力になっていると実感しました。

―スクールの紹介、特徴などを教えてください
栗原:私が運営するバスケットボールスクール「栗ニック」では、1クラス制のスクールと、レベルに応じて選択できる2クラス制のスクールがあります。
いずれも年齢では区別せず、大学生と小学生低学年の子が同じクラスで練習することもあります。異年齢の交流を大切にしており、大きい子は小さい子を助けたり、小さい子は上級生に負けないよう努力したり、憧れの選手をスクール内で見つけることもあります。
また、月謝制ではなく都度払い制にすることで、自分の都合の良い時に参加できる仕組みにしています。さらに、スポーツのパフォーマンス向上のため、moistretch®︎というボディワークのインストラクター資格を取得し、スクールのトレーニングにも活かしています。

―今後のビジョンを教えてください
栗原:一人ひとり目指す目標は異なります。その目標に寄り添い、達成のサポートをすることが私の役目です。
選手の目標が私自身の目標にもなっているので、ワクワクしながら一緒に成長していきたいと思います。スクールを通じてバスケットボールをもっと好きになってくれる人が増えたら嬉しいです。
また、将来的には自分のバスケットボールコートや体育館を持ちたいという夢もあります。加えて、地域貢献にも力を入れたいと考えており、スクール生が地域の飲食店やお店とつながれるような仕組みを作ることが目標です。
