レンタルコートを運営してみたい方へ

バスケ好きなら一度はやってみたいと思う(か分からないですが)、バスケコート運営についてお伝えできればと思います。私は25歳から30歳までバスケコートの運営に命かけてたので(笑)つつみ隠さず色々と書きたいと思います。

これからバスケコート作ろうって考えてる方、参考までに・・・(あくまで2009年から2014年までの経験をもって話をするので、時代が解決してるところもあることを念頭に入れて下さい)

物件探し

※この記事では、雨天の場合にプレーできないストリートコートは対象外とします。レンタルコートは予約をお客様からいただいてご利用頂くので、全天候型のコートを基本として考えていきます。

物流倉庫などを改築する

手っ取り早くやろうと思うと、物流倉庫の中身を改装してコートにするパターンがあります。
以下の施設は倉庫を改築しています。

▼HOOP7
https://www.hoop7.jp/

▼ディーナゲッツ
http://www.d-nuggets.com/

▼PARKDAY
https://www.new-park-project.com/parkday

▼MILADA
https://milada.jp/

▼F1 STUDIO
https://handoff-all.jp/

クリアしたい最低条件

バスケコート1面確保しようとしたら130坪〜150坪くらいの延床面積の倉庫を探す必要があります。

しかも、壁から壁の間には障害物がほとんど無く、天井高は最低でも6M必要です。(できれば7M欲しいです)

途中で柱がかまされていたらプレーに支障が出ますし、天高が低いと3ポイントシュートは普通に打ったらリングまで届きません(笑)

それと、これ一番残念な部分なんですけど、

物流倉庫って、準工業地帯って言われる
シンプルに言えば「アクセスが非常に悪い」ところに存在します。

住宅街には基本的にありませんし、もし作れたとしても完全防音でもない限りドリブル音やシュートが外れた時の音が響き渡るので一瞬でクレームの対象です。

よって、割と辺鄙なところにコートを作らないとならないのが現実です。

アクセス良好を条件として物件を探し始めると、いい感じの倉庫なんてなかなか出てこないし、あっても家賃が爆裂高い、とかになります。

駅から徒歩10分圏内であれば奇跡。(賃料間違いなく高いです)
都心から車で来られる場所であれば良いと思いますが、1時間もかけてただバスケしにくる人は多く無いので、30分以内で到着するくらいを目安に考えれば良いかと思います。

ちなみに、車で来ていただくことを勧めるのであれば、駐車場スペースの確保は絶対です。有料駐車場だとお客様が嫌がりますよね。

この辺を踏まえてどこを着地点とするか?を考える必要があります。

初期費用で結構かかる

物流倉庫の賃貸は、普通のマンションとかの賃貸と同じ感覚ではないのでご注意ください。

例えば、家賃50万円だとしても、保証金200万(4か月分)、敷金300万円(3ヶ月〜6ヶ月)とか、礼金150万円(3ヶ月〜6ヶ月)とかザラです。もちろん交渉の余地はありますが、賃貸契約するだけでもコストはかなりかかることを覚悟する必要があります。

他の方法を考える

土地を買うか借りるかして、ウワモノを自分で建てるってパターンですが、これは他の事業でちゃんと稼いでいる方ならできるって感じでしょうか。そうでなくとも、銀行でまとまったお金を借りてくる必要はありそうです。テントドームならやれないことないと思いますが、それでも規模によっては5000万くらいは覚悟した方が良いかもしれません。

廃校が全国で増えている現状を踏まえると、文部科学省が行う”みんなの廃校プロジェクト“を活用して体育館をレンタルコートとして事業化させてもらうことも不可能ではないです。岩手県で実際にそのような事業をされている方に、別の企画ですがインタビューしているのでぜひご覧ください。

ガソリンスタンドやパチンコ屋さんの跡地というのも、地面が平らなので活用できるのでは?と考えたことはあります。もし、そのような場所の運用をお考えのバスケファンの方はご連絡ください。(笑)

コート作り

床を平らにする

契約が完了してコートを作ろう!というタイミングでまず問題になってくるのは床の凹凸。
コートの基礎となる倉庫の地面を平らにする必要があります。

ほとんどの物流倉庫は床が平らではありません。平らにみえていても斜めになっていたり、ボコボコしていることが多いです。ボールを置いたら勝手に転がってしまうのは困りますよね。

これを平らにならすのを、大家がやるか?業者に頼むか?DIYするか?
で、考えることになります。

契約前に確認しておくと吉

物件契約を条件に、予め不動産会社等を通じて大家さんに相談してみると良いと思います。
運が良ければ0円で平らにしてくれるかも!

経験談ですが、大阪府堺市のバスケットボールレンタルコートを作る時は、大家さんのご厚意で床を平らにしてもらいました。しかも全額負担。これは本当に運が良かったと思います。

業者に頼むと、広さにはよりますが
また数十万〜数百万円の余分なお金がかかってしまうかと思います。

DIYでやるという方法が最もコストはおさえられますが、とんでもない手間がかかることと、リスクとしては後々ボロがでる可能性あります。お財布と相談しながら、最も良い方法を選びましょう!(笑)

コートの素材選び

地面を平らにしたら、次は、コート素材について考えます。

アスファルト剥き出しでペンキを塗るなどで対応するのは・・・公園などの無料コートの話かなと。

レンタルコートはあくまでお客様からお金をいただくわけですから、基本的には最低限、フローリングシートくらいの素材のものは欲しいですね。

今はスポーツコートと契約してオリジナルを作ったり、モルテンさんがコートのフルセットを販売していたりします。

私、個人としては、タラフレックスが良いと思っています。
体育館のフローリングとまではいきませんが、膝にも負担が少なく、滑りにくい、転んでも痛くない優良素材だと思います。

バスケットゴールを搬入する

コートが決まったら、リングですね!

スポルディング製のポータブルバスケットゴールは安価なものもありますし、導入が気軽にできるかと思います。組み立てサービスもありますが、基本的には自分で組み立てる必要があります。

セノー製のバスケットゴールはカスタムができて良いですね。しかし、1台につき高級外車くらいします。本格派思考の方にはお勧めします。

ポータブルリングだと老朽化するのが早く、シュートの跳ね返りも緩くなるので、最終的にボールがリングに当たればシュート入るくらいの感じになってきます。笑

資金次第だと思いますが、先々考えてご検討下さい。
※賃貸契約の場合は退出時に現状回復が必要になるケースがほとんどなので、倉庫自体に何か取り付けるときは大家さんに相談することをお勧めします。

店舗レイアウトを考える

コートとリングができて、終わり!ではありません。
ここからお店にしないとなりません。

物件契約する時点で考えておきたいことですが、
受付はどこで行うか?会計はどこで行うか?お客様のトイレは?更衣室は?休憩所は?など考えなければなりません。

スタッフが休憩する場所や、事務作業を行うスペースの確保なども考えなければなりませんね。
(最近は無人営業もあると思うので、その場合はいらないと思います)

契約する前の段階から、物件内覧の時点で床のことやリングのことと合わせ技で考えておくことが必要なんです。・・・楽しくなってきたでしょ?(笑)

私はコレ考えるの結構好きなんですけど、ここで面倒に感じたら多分バスケコートの運営なんてやらない方がいいかもしれません。

諸々全部準備して、ようやく営業準備完了です!

いやいや、まだまだ決めないとならないことがありますね。

運営オペレーションを考える

営業時間・コートの料金設定・予約管理方法・コンテンツ・スタッフの確保・支払方法の設定・物販の有無など、最終的にここが肝になってくる運営オペレーションを考えます。

こちらですが、物件がみつかった時点ですべてシミュレーションしておいた方が良いです。この時点で「あれ?黒字化できないかも」とか、「黒字ちょっとしか出ないかも」なんて思ったら、やらない方が吉です。(ライフワークとして運営する方も多いので一概には言えませんが)

ここだけの話ですが、コートの広さ(物件の延べ床面積)とアクセスが事業収益に直結してくる部分はあるので、何度も何度も、あらゆるリスクを考えてシミュレーションすることを強くお勧めします。

集客方法を考える

集客がうまくできないと、1~数か月、閑古鳥が鳴くことになります。準備段階からSNSなどで告知すれば集客しやすいと思いますが、公式のWEBサイトは準備しておいた方が良いと思います。

ターゲットを意識してコンセプトを伝える

レンタルコート事業は、コミュニティづくりが大切だと思います。どのような人たちにコートを使って欲しいのか?どのようなコミュニティを作っていきたいのかを良く考えてコンセプトを発信していけば、自然とファンは増えていくと思います。

売上とか利益とかは、後から自然とついてくるかと思いますよ。本当の意味で賑わうお店ができあがるまで、1年くらいはかかるんじゃないかなぁと思います。

最初は、興味半分で来てくれる人が多いので、あれ?結構いけるんじゃない?って思うかもしれません。でも、ミーハーな人はその後来なくなります。だからコンテンツを充実させたり、来たくなるキャンペーンを計画的に打ったりする努力は必要になります。

常連様に愛されるようになるには、スタッフも常に元気で、親切で、思いやりのある対応が求められると思いますし、結局は、商売繁盛することで成り立っていく必要があります。

ただ、バスケする場所あるよー。では難しいかと。

バスケコートを運営するメリット

さて、ここまで「けっこう大変だよー」ってことだけお伝えしてきましたが(笑)
バスケットボールレンタルコートの運営を通じて感じられる、素晴らしいことがたくさんあります。

バスケの輪が広がる

バスケ好きで、バスケの仕事してる人ととことん出会えますし、色々なチームとの交流もあるかもしれません。お客様とのつながりもたくさんできます。これまでの人生をそのまま生きていたら絶対に出会えていなかった人と、必ず出会えます。

たくさんの方々から感謝される

日本は安心してバスケできる場所が少ないですし、21時以降にバスケできる場所として営業すれば、平日はお仕事で忙しい皆さんも仕事終わりに息抜きバスケとしても利用できるため、そんな環境を作り、場所を提供するレンタルコートが存在していることで皆さんから感謝のお言葉をいただけることがあります。

もちろん、コンテンツとしてスクールなどがあれば保護者さんや選手に喜んでいただけます。やり甲斐をとことん感じることができる仕事だと思いますよ。

プロチームを持てるかも?

自分のコートを拠点にして、3×3などのプロチームを持つことも可能になります。
スクール運営もこれで波に乗れる部分があるかもしれません。やはり、場所があるって最高なんです。

バスケコートを運営するデメリット

楽しいことばかりではありません。運営を続けていくには根気と体力が必要です。なんとなくバスケが好きで、関わっていたいからという生半可な気持ちだと火傷します。

まず、体力面です。レンタルコートで収益を上げようとすれば、子どもから大人まで幅広い層に利用していただく必要があります。大人は、平日遅くまで仕事をしている方が多いので、15時頃に開店したとしてもコートが賑わってくるのは20時以降になってきます。それまでの時間は小中学生向けにスクールを開催したり、たまたま平日休みだった大人がフラッとシューティングに来てくれるくらいですね。

となれば20時からがお店の書き入れ時となるので、1団体のプレー時間が平均2時間だとしても
1回転目で22時を迎えます。

もちろん、施設の家賃や光熱費、スタッフの人件費などの経費はコートの売り上げから賄う必要がありますので、平日1回転の売り上げでは到底食べていくには難しくなります。コート数が増えても家賃や光熱費はあがるので同じことです。(もちろんコート数が多い方が利益率は高いですよ)

仮に、3回転させたとすれば営業時間は深夜2時までということになりますね。
店舗運営スタッフは2時まで施設で接客を続け、その後に閉店作業を行うことになるのです。
スタッフが家に帰るのは夜中の3時手前くらいになるかと思います。

1団体の売上が平均1万円だったとして、3回転で3万円。
1ヶ月の平日の売上は60万円です。(めちゃくちゃ上手くいって、です)

土日祝は書き入れ時なので、平日に定休日を作ったのならその分売上は減りますね。
土日は3倍程度の売上が期待できるかと思いますが、営業時間を朝から晩までにしてコートに張り付きは正直かーなーりーキツいです。(経験者は語る。笑)

ただの「バスケ好き」じゃ乗り越えられない精神力と体力が必要になってきますね。

それでも、ちゃんと回れば事業収益は望めます。と言っても儲けられるってところではなく
やはり、やり甲斐や生き甲斐という部分になってくるとは思うので、どの道を選ぶのが自分が幸せかによります。※規模や集客状況によっては月数百万の利益を上げることは可能です。

私の場合は、当時、とにかくバスケを仕事にしたくて、プロ選手としてではなく、裏方としてバスケで食べていく生き方をしていくと決めていたので、余裕で耐えられました。

耐えた、というよりは無理してる感覚は無くて、現場での仕事は本当に楽しかったですね!

この記事で現実をお伝えして、それを参考にこれからバスケコートをやろう!
って人が増えてくれたら日本のバスケってとても良くなるんだと思います。

あ、詳しくは言いませんが
毎月の固定費の支払いは冷酷にもやってくるので事業融資の返済などもあればとにかくお客様の入り(売上)と経費とでスト2ばりに格闘します。ご来店いただいたお客様からお金をいただくことに躊躇してはいけません。しっかりといただけるものはいただく必要があるのです。(押し売りはやめましょう)

日本のレンタルコートの現状

これは、シンプルに言います。

まだ少ない!!!

フットサルコートは日本中に4桁の数があるそうです。バスケは2桁。
※モルテンの方とお話した時に言ってました。

レンタルコートがあることで、スクール活動が活発になります。日本の競技レベルを底上げする原動力がサッカーに比べてその規模でしかない今、やっぱり日本にはバスケする場所が少ない、となっても致し方ないのかと思います。

これを解決していけば・・・自ずと競技レベルは上がる。

部活とクラブも選べる時代ですしね。指導者が活躍する場所もやっぱりないといけないです。

「やることはやりました。後は日本協会にお任せします。」ってところまで、草バスケ組は頑張っていきたいところですよね。

奇しくもコロナ禍に突入してから大阪はもちろん、全国的にレンタルコートがちょこっと増えました。シューティングに特化した施設も出てきましたよね。これは素晴らしいです。

みんなで、日本バスケのレベルの底上げを応援していく。これは本当に大切です。

日本バスケが、世界と肩を並べられる未来に向かって頑張らないとなりませんね!

おわりに

皆さんにとって仕事って何でしょうか?
国民の義務?生活のためにしなくてはならないもの?

私は、仕事をすることで幸せを感じられるかどうかを大切にしています。仕事は、人生を豊かにしてくれると思っています。お金は稼がないとならないし、生活も不自由なくできるべきである。かと言って、そのためだけに仕事をしたくないし、仕事をすることで「何か(誰か)のために」なっていることは一番大切にすべきことだと思います。

お金だけが最後に残ったって、あなたのことを真剣に語ってくれる人はいませんが

あなたが残した功績貢献
きっと、あなた自身と周りの人々の胸に強く遺り、語り継がられていくことだと思います。

極論ですが「生きる」ってそういうことだと思ってます。

人生かけて、バスケットボールを盛り上げましょう!
※多分ここまで読んでくれた人はバスケに人生かけれる人です。

最後まで読んでいただきありがとうございました。
何か質問などあればお気軽にご連絡ください。

山口 貴久(やまぐちたかひさ)
1984年8月17日生まれ 静岡県焼津市出身 東洋大学 卒
大学在学中に「バスケットボールで食べていく」ことを決意。2014年に一般社団法人バスケットボール推進会を創業、スクール事業を柱に競技普及に貢献。 2023年にメディア事業、アパレル事業を主軸とした株式会社フロムレジェンドを設立し、チャレンジの幅を拡げる。